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母なる大地 R 自然文明 (3) |
呪文 |
S・トリガー |
バトルゾーンにあるクリーチャーを1体選び、持ち主のマナゾーンに置いてもよい。そうした場合、そのマナゾーンにあるカードの枚数とコストが同じかそれ以下の、進化クリーチャーではないクリーチャーを1体、そのマナゾーンから選ぶ。そのプレイヤーはそのクリーチャーをバトルゾーンに出す。 |
※プレミアム殿堂 |
自分か相手どちらかに対し、バトルゾーンとマナゾーンのクリーチャーを入れ替える呪文である。
デュエル・マスターズというゲームでは、手札からマナゾーンにカードを置いてゲームを進行させていく。
マナゾーンに置かれたカードは回収しない限り利用できなくなるが、マナゾーンにカードを置かないと手札からカードを使用することもできない、というトレードオフで成り立っている。
ところが《母なる大地》の本質は「マナゾーンにあるカードはマナも生み出せるし、マナゾーンにあるクリーチャーは(そのマナゾーンの枚数の最大キャパシティを超えない範囲で)手札にあるかのように呪文の詠唱コストである『3マナ』で利用できるようになる」というもの。
つまりゲームシステムに真っ向から反発する性能を持ってしまっている。
一部のカードだけが能力としても持つ、マナゾーンから本来のコストを支払ってカードをプレイできるマナ召喚ですら便利なのに、呪文1枚と適当なクリーチャー1体があるだけで、マナ召喚を持たないクリーチャーが本来のコストより低くマナから引っ張り出せるとなるとその恐ろしさがわかるだろう。
ついでに出せる文明に縛りもないため、「マナにある文明のカードしか利用できない」というゲームシステムにも喧嘩を売っている。たとえデッキの色と一致しない1枚積みのクリーチャーでも、マナに置いておけば出せてしまう。
指定ゾーンにカードが多くあるほど効果が強力になっていくという性質と、その多くなった指定ゾーンから任意に選べるという部分でもシナジーがある。
コストの重いクリーチャーはマナが溜まるまでマナチャージに使うという定石と、マナが溜まってしまった後はコストの重いクリーチャーを多くの選択肢から使いたいという要求が完全にマッチしている。
クリーチャーをマナゾーンに置いた後、仮にそのプレイヤーのマナゾーンにカードが7枚あったとすれば、その7枚から出したいクリーチャーを選べる。同じサイクルの《緊急再誕》と比較したらマナゾーンにカードが7枚もある場合、手札のカードはせいぜい4枚以下ぐらいだろう。
マナゾーンのカードの数え方も、タップ・アンタップが考慮されないのも強すぎる原因である。マナを支払うにはアンタップ状態からタップ状態にする手順が必要となるが、《母なる大地》の効果処理の段階でマナを使い切ってしまったとしてもお構いなしに最大キャパシティを超えない範囲で1体出すことができる。
驚異的な自由度を誇るカードであり、その性質はゲーム性を無視しているといっても過言ではない。マナゾーンの枚数の絶対値こそは必要なものの、カード1枚の消費で達成できるリソース拡大と実質的なコスト軽減であることから、弾が進むにつれて出すクリーチャーの選択肢が増えるとその度にポテンシャルが高まっていく。カードパワーがインフレした現在の視点から見ればいかに規格外の呪文であるかがよくわかるだろう。
余談だが、マナゾーンに置いたカードはランデスでしか墓地に落とされない。言い換えれば《スケルトン・バイス》などのハンデスでキーカードが墓地に落とされない比較的安全なゾーンである。こういう事情も《母なる大地》の強さを後押ししている。
序盤は自分の《青銅の鎧》や《解体人形ジェニー》を、《鳴動するギガ・ホーン》や《腐敗無頼トリプルマウス》などに入れ替えたり、それらを《フォース・アゲイン》のように出し入れすることでコントロールを補助する。場合によっては《アクア・サーファー》や《ヘリオス・ティガ・ドラゴン》等の除去で盤面整理したりと、バトルゾーン・マナゾーンにあるクリーチャーのcipを呪文感覚で行使できる。最悪《青銅の鎧》の出し入れ程度しかできなくともその場合は疑似《フェアリー・ライフ》になるので完全に無駄にはならない。
後半はウィニーをフィニッシャーに入れ替えてフィニッシュ用の盤面を作り上げればよい。軽さ故にその汎用性は留まることを知らず、低コストで進化元を出して即進化を狙ったり、同じく即G・リンクを狙ったり、展開後に《鎧亜の咆哮キリュー・ジルヴェス》を出して猛攻を仕掛けたり、攻撃寸前に《呪紋の化身》や《光神龍スペル・デル・フィン》を出してS・トリガーを封じたりとやりたい放題出来た。
序盤から終盤まで八面六臂の活躍を見せる驚異的な汎用性の高さを持ちながら、マナがたまった後の《母なる大地》が絡んだムーブは高い密度を誇り、手軽かつ素早くゲームエンド級の盤面を作り上げることが可能だった。
クリーチャーの入れ替えは相手のクリーチャーにも使用可能で、出すクリーチャーの選択権は自分にあるため、相手のフィニッシャーをマナ送りにし《青銅の鎧》や《幻緑の双月》などの小型に変換して無力化するなど、手軽な確定除去としても使えた。
相手のマナゾーンにデメリット能力持ちのクリーチャーやキーカードがあればそれを引き摺り出すことも可能。相手のハンデス能力もちクリーチャーを出させて自分のマッドネスの誘発させる、自分のクリーチャーがいない時に《魔刻の斬将オルゼキア》を出させて自壊させる、逆に《無頼聖者スカイソード》などを出してライブラリアウトを誘発するなど、相手のカードを利用したトリッキーなプレイでアドバンテージを稼ぐことができた。
しかもS・トリガーまで付いており、防御札としての性質まで持っている。相手のクリーチャーを入れ替えれば、上記の確定除去の要素に加え召喚酔いでそのターンの打点を減らすことが出来る。自分のマナゾーンにブロッカーや除去能力持ちクリーチャーがいれば、自分に使ってそれらを防御札として活用できる。自分の使ったニンジャ・ストライクを種にするというテクニカルなプレイも見られた。
勿論、普通に自分のフィニッシャーを引き出してもよい。相手ターン中にS・トリガーの形でフィニッシャーを出すことが出来たなら、そのままゲームセットである。
ここまで出来てコストはたったの3。自分の単色クリーチャーに使うとアンタップ状態のカードがマナゾーンに置かれるので実質2である。
この軽さにより、ポテンシャルが無限に増加する中で、驚異的な汎用性・コストパフォーマンスを実現できてしまっている。
強弱を語る以前に、あまりにも使用者にとって好都合すぎるカードであり、プレミアム殿堂入りするのは必然だった。
調整版や派生版となるカードも数多登場し、そのうち《母なる紋章》はプレミアム殿堂入り、《獰猛なる大地》、《生命と大地と轟破の決断》は殿堂入りを果たした(《獰猛なる大地》はその後殿堂解除)。他にも部分的に能力を再現した《母なる星域》や《父なる大地》、《蒼龍の大地》があったが、いずれも活躍した。
このカードが環境や後のカードデザインに与えた影響は非常に大きい。数ある呪文の中でも、デュエル・マスターズの歴史を語る上では外すことができないカードであることは間違いないだろう。
2004年6月26日にDM-10にて登場。自然の入るデッキでは積極的に採用された。
同弾では《無頼聖者スカイソード》と《無頼勇騎ウインドアックス》も登場。マナブーストしながらその他のアドバンテージも稼げるので、大型に繋げるためによく使われた。
特に【ボルバル】では切り札の《無双竜機ボルバルザーク》を引っ張り出すために重宝された。
逆にボルバルをマナゾーンから引きずり出して自滅させる光景もよく見られ、不用意にボルバルをマナゾーンに置くのは禁物であった。
登場当初はカードプール上のS・トリガー全体が貧弱であったことから色さえ合えば【速攻】系統にさえも防御札兼ブロッカー除去札として投入された。後に調整版の《父なる大地》が【赤緑ギフト】などで使われたことを考えると当然の話であった。
このカードのあまりの便利さによって《ナチュラル・トラップ》は環境から一時姿を消すこととなってしまった。
単にマナ送りとしての性質がかぶるだけでなく、マナ送りにしてもすぐに出し直されてしまうためである。
当時は《凶星王ダーク・ヒドラ》もよく使われており、もっとも確実な除去は《魂と記憶の盾》によるシールド送りとされていた。
転生編終了と共に【ボルバル】は消滅したが、不死鳥編には【サファイア】で利用された。
《大勇者「ふたつ牙」》でマナブーストした後に《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》を出す【牙サファイア】が生み出された。
そちらがプレミアム殿堂に指定された後は《光神龍スペル・デル・フィン》を出す【牙デルフィン】など、引き続き様々なクリーチャーを出す手段として使われた。
極神編で《龍仙ロマネスク》が登場したことは事件であった。
cipで4枚ものマナブーストを行い、ターン終了時にマナゾーンのカードを1枚墓地に送るという能力は《母なる大地》と組み合わせてくださいといわんばかりのもの。《青銅の鎧》から繋げば次のターンに《母なる大地》か《母なる紋章》を使うことで《龍仙ロマネスク》が出せる。手札にもう1枚それらがあれば、今度は《龍仙ロマネスク》をマナゾーンに送ることで、デメリットを消しつつ大型を出すことができた。
このコンボにより、これまでと比較にならない速さで《光神龍スペル・デル・フィン》《緑神龍ザールベルグ》《血風聖霊ザーディア》などが出せてしまっていた。
こうして2007年11月15日、《龍仙ロマネスク》との組合せがプレミアム殿堂コンビに指定され、これらのカードを一緒にデッキに入れることができなくなった。【ターボロマネスク】が環境を荒らしまわる前に対策がとられた形となった。
2007年11月23日にはスーパーデッキ・ゼロの1つであるDMC-39 「ビクトリー・ソウル」が発売。
《母なる大地》が4枚収録という大盤振る舞いであり、多くのプレイヤーを喜ばせた。
長らくは「《母なる大地》が存在するデュエマ」として容認されてきたが、2008年4月15日に殿堂入りを果たした。特に極神編では《腐敗無頼トリプルマウス》などのDM-26のサイクルや、ゴッドをはじめとした強力なフィニッシャー達が登場したのも大きい。
2009年4月15日にプレミアム殿堂入り。インフレに伴うこのカードの強さの増大はもはや看過できなくなったということだろう。
《母なる大地》はテキストがややこしく、カードプールによって性能が左右されやすいため、低年齢層や初心者には直感的に強さがわかりにくかった。大人のプレイヤーと子供のプレイヤーの格差となっていたのは事実であり、それもプレミアム殿堂入りとなった要因の1つだろう。
同時に《母なる紋章》も殿堂入り。コンボの安定性が大きく下がったため《龍仙ロマネスク》とのプレミアム殿堂コンビは解除された。
登場して以来、自然文明の入ったデッキにはほとんどの場合で採用され、公式大会で入賞・日本一に至った自然入りのデッキにはほぼ確実と言っていいほど投入されていた。
現役の頃は自然の入ったデッキの必須カードとして扱われ、ビートダウン・コントロール問わず盛んに4枚積みされていた。
あらゆる非進化クリーチャーはこの呪文で踏み倒すことを前提として考察されていたといえる。
DM-10 「聖拳編(エターナル・アームズ) 第1弾」の3コストのコスト踏み倒し呪文サイクル