高速化 [編集]
ゲームの進行速度が以前の環境より早くなること。主に、フィニッシャーの展開やダイレクトアタックの速度が早まる。後述するが、カードパワーが上がっていくだけのインフレとは意味が異なる。
実はこの高速化の定義は曖昧。
一般的にはゲーム開始から終了までの現実時間が短縮されることを指すことも多いが、実際は黎明期から見るとそんなに平均的な試合時間が減少していなかったりする。むしろ、黎明期の【青単速攻】の方が圧倒的に早いということも。早期決着を狙うビートダウン方面にも、防御を固めるコントロール方面にもインフレは必ず起こるため、インフレしたからと言って試合時間だけが減少する一方なんてことはない。
しかし、平均は考えずに、理論上最速で決着を付けることができるターン数の減少を指すのであれば、高速化は環境が進むごとに着実に起こっている。ただし、【ダーツデリート】のように理論上は1ターンで決着は着くが、現実的にあまりにも確率が低いものは、高速化の指標にされることはない。
また、クリーチャーの展開速度、ゲーム開始からファッティがバトルゾーンに出るまでの時間などを指す場合は、ビートダウンにもコントロールにも高速化は起こっている。また、あっさり3ターンでゲームが終わる事態も増えていっている。
ゲームの進行速度が増した事と、1ターンで容易に即死打点を形成出来るようになった事から1ショットキルデッキが数多く台頭するようになり、ブロッカーとタップキルで制圧したり、火力付きのS・トリガーを多めに積んで対策する旧来の速攻対策は競技レベルにおいてはまるで通用しなくなった。
これに伴いコントロール系統も盤面を制圧してから長期戦を狙うものよりも、隙を見て速やかにエクストラウィンやライブラリアウトによる勝利を狙うループ系統など、猛攻をしのいだら相手にターンを渡さず決着を目指すデッキタイプが主流となった。
高速化する背景には、デュエル・マスターズというゲーム自体の競技性の高まりや見栄えの問題も背景にあると考えられる。
そもそもデュエル・マスターズはマナの関係で最序盤の動きは地味かつ簡素になりがちであり、さらに大規模の大会でのストリーミングライブ配信においては、プレイ時間そのものが長くなる傾向にあるランデス・ロック・コントロール系統同士の仕合は長期戦になりやすく、どうしてもビートダウンと比べると見栄えは悪い。同じような光景のにらみ合い・読み合いが続く状況も同様。また、長時間に及ぶスローな試合展開は円滑な運営にも支障を来しかねず、早期決着で終わる方が負担は少ない。
総じて、プレイヤー・観客・運営の負担の観点からゲームテンポが良い(速い)方が好まれるようになってくる。
- これは何もデュエル・マスターズに限った事ではなく、PvP(対人戦)による競技性を志向したゲーム全般に共通して起きている現象である。
高速化の変遷 [編集]
高速化と言う言葉自体は古くから存在していたが、より広く浸透したのは革命編における侵略というギミック、取り分け《轟く侵略 レッドゾーン》、それを軸に構成された【赤単レッドゾーン】の存在が大きい。
パワー12000以上のT・ブレイカーはそれまで8コスト以上か、それに見合うデメリットが伴うものであった。しかし《轟く侵略 レッドゾーン》はこのレベルのスペックを持ちつつ、自身のコスト踏み倒し能力で3、4ターンに登場し攻撃もできる。加えて強力な能力で場を荒らした上でそのままダイレクトアタックまで持ち込める。
同時期に登場した他の侵略持ちカードもこれに準ずる速度対性能を持ち、多くのプレイヤーは否が応でもこの高速化という現象を意識せざるを得なくなった。
DMR-17のCMやアニメ『VSR』でも「3ターンキル」と宣伝されており、公式が《轟く侵略 レッドゾーン》を使った3ターンキルを半ばデザイナーズコンボとしていると、当時はプレイヤー間に衝撃が走った。
革命ファイナルにおいても、味方クリーチャーを手札とマナゾーンから展開出来るなどの革命チェンジを持つクリーチャーが高速化に拍車を掛けた。特に、多色クリーチャーのコスト踏み倒しとスピードアタッカーの付与を行う能力を持った《蒼き団長 ドギラゴン剣》の登場で、3、4ターンキルがさらに容易になった。長期戦を得意とするコントロール系のデッキでも、《時の法皇 ミラダンテXII》などで早い段階から強力なロックで相手を一方的に追い詰め、中速並みの速さでダイレクトアタックに持ち込めるようになった。
そのため、革命編以降の環境は「高速環境」と呼ばれるようになった。良くも悪くも、この時期の環境の変化はデュエル・マスターズの歴史を変えた分岐点と言えるだろう。
新章に入ると軽量のコスト踏み倒しメタクリーチャーが増え勢いは落ちる事となった。しかしループデッキに対しても高速化が施された。ループ中にランダム要素が関わる場合、最も望む結果まで省略することが認められた。
双極篇に入ると、パワー9000のW・ブレイカーでありながら、1ターン目からバトルゾーンに出ることができる《“轟轟轟”ブランド》が登場。このカードによって2ターンキルが現実的な確率で実現できるようになり、高速化がさらに激化する事態となった。
しかし、超天篇に入る直前に高速化しすぎた環境に歯止めを利かせるべく、《蒼き団長 ドギラゴン剣》と《時の法皇 ミラダンテXII》が殿堂入りに指定され、その4ヶ月後には《“轟轟轟”ブランド》も殿堂入りした。
だが、DMRP-11では重量級マナドライブGRクリーチャーや《生命と大地と轟破の決断》等の登場により、4~5ターン目にソリティアからの1ショットキルや即死コンボが炸裂する高速環境に戻ってしまった。2020年1月1日には《BAKUOOON・ミッツァイル》等に殿堂入りやプレミアム殿堂の措置が取られたが、依然として高速環境は収束の目処がたっていなかった。
また、十王篇に入ってからはGRによる高速化も落ち着いてないうちにDMBD-14が発売。《ヘブンズ・フォース》を使うことで2t目に《最終龍覇 グレンモルト》や《∞龍 ゲンムエンペラー》などの強力なドラゴンを出す【白黒赤ドラグナー】が流行したことで、それに対して《緑知銀 ダッカル》や《「策略のエメラル」》で《凄惨なる牙 パラノーマル》を表向きでシールドに置くギミックを《ヘブンズ・フォース》を使用し最速2t目に相手のクリーチャーを常時マイナス3000することが出来る【ダッカルパラノーマル】、《Q.Q.QX./終葬 5.S.D.》や《U・S・A・BRELLA》、《洗脳センノー》といったメタカードを《ヘブンズ・フォース》によって2t目に出して相手の動きを先に牽制する【白赤緑ヴァイカー】など、相手のヘブンズフォースを使った動きより先に自分のヘブンズフォースを使った動きを押し付けて相手に動かせないという、先行2t目で勝負が決まるほどの高速化が起こった。
ところがG・ストライク、EXライフが登場した王来篇環境では一変、このシリーズのギミック、パワーカードを味方に付けた【5色コントロール】系統が跋扈し、高速環境がここに来て是正された。【速攻】である【我我我ブランド】ですらG・ストライクや単体除去S・トリガーを見越して打点を貯めてから4ターン目辺りにワンショットを始めることがざらになり、5ターン目まで長引くことも珍しくないと聞けば環境の速度の程が分かるだろう。
参考 [編集]